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    清水夏穂

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    山ぶどうのツル細工を手がける工人で、奥会津編み組細工の伝統工芸士である五十嵐喜良さんから指導を受ける清水さん。

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    三島町生活工芸アカデミー受講の様子。

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    材料の削りや編み目をつめる道具は特注品。作るものにあわせたさまざまな道具が伝わる。

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    マタタビは表皮をはいで切れ目を入れ、4本に割いて材料となるヒゴを作っていく。

  • 地域の変わらない手仕事を守るために

     「もともと、ものづくりが好きで、大学でも木工を専攻して家具を作っていました。自分で使う暮らしの道具を天然の素材を使い、自分の手で作るというところに惹かれました」と話すのは神奈川県出身の清水夏穂さん。平成28年に奥会津編み組細工の技術継承、「三島町生活工芸運動」をはじめとした文化の伝承を目的とした地域おこし協力隊に着任し、三島町に移住してきた若き担い手だ。
     編み組細工は山ぶどうやヒロロ、マタタビなど身近でとれる材料を使い、暮らしに根差した道具をつくる。雪に覆われる冬の農閑期の手仕事として親から子へ、隣近所へと伝わってきたものづくり。「昔は家族やご近所が集まり、囲炉裏を囲んでおしゃべりしながら作られてきたそう。私自身、一人で黙々と作業していると息詰まることが多いので、先輩方の元にお邪魔して円座を組んで作業させてもらうこともあります」と、技術のこと、三島町の文化のことなどを聞きながら編む時間がすごく貴重で楽しいと話し、町に溶け込みながら日々腕を磨いている。
     清水さん以外にも、一年間町へ移住し、三島町に伝わる文化を学ぶ『三島町生活工芸アカデミー』や気軽に編み組細工を学べる『ものづくり教室』などの開催で、若い担い手は少しずつ増えつつある。「原材料と編む技術さえあれば、ずっと続けられるのがこの仕事の良さですが、続けていくために材料確保が必要不可欠」と話す。特に山ぶどうのツルは年々採れる量は減少。一度切ったら20年以上は同じ場所からは採れないため、採取のサイクルの狭間で毎年採取が可能なオニグルミを自分で育てるなど、素材を守り、育てることにも取り組みたいという。技術を学び、作るだけではなく、原材料が採れる自然環境を守り、その大切さを伝えていくことも大事な役割と考える清水さんの志が、三島町の「ものづくり」を強く支えていく。

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    自分が使う材料は自ら採るのが基本。ベテラン工人たちは長年の経験でどこに良い材料があるか判断して採取。「その経験と勘、採取するスピードには驚かされます」と清水さん。